PROFILE

地域おこし協力隊 西脇 透 さん 
所属地域:平田村
着任年月:2019年12月
出  身:新潟県
活動内容:農業支援

Q1.地域おこし協力隊に応募したきっかけを教えてください。

 協力隊着任前は、東京都の大田市場に勤務していたのですが、2007年から3年間、福島県白河市の生しいたけ栽培工場で営業としてお世話になっていた時期があります。白河市を離れた翌年、東日本大震災が起こりその工場は閉鎖。「何もお手伝いできなかった」という想いがずっと残っていました。60歳を迎え、元気なうちに福島へ恩返しがしたいと移住を決意しました。

 品川のハローワークで地方移住の相談窓口として有楽町のふるさと回帰支援センターを紹介していただき、福島県の就職相談員から、地域おこし協力隊について教えてもらいました。今までの経験を活かし、身近な生産者や農家の方に寄り添い、日々の課題や問題点を一緒になって取り組み解決する農業支援を行いたいと思っていたので、県の移住コーディネーターのサポートも受け、農業分野で募集を行っていた平田村の地域おこし協力隊への応募を決めました。


Q2.活動内容を教えてください。

 着任当初は、今まで培ったスキルや人脈を活かして、市場関係者やバイヤーと連携し、平田村の組合組織や生産者が集まる協議会の方々を連れて東京に行きます!と公言していたのですが、コロナの感染拡大を受け、その公約が果たせない状況になってしまいました。しかし、こんな状況でも、農業支援として何ができるか考えました。

 自分自身、農産物の営業の経験はありましたが、栽培の経験は無かったので、村役場の空いている土地を借りて、花や野菜の栽培を始めてみました。種から育てたヒマワリは、間引いた苗もポットで栽培し、それを子ども園や小学校に持って行って植えました。花から繋がったご縁で、子どもたちの前で道徳の授業も行いました!

 また、栽培したカリフラワーは出来が良く、品評会に出したら賞をもらえたんです!野菜はカリフラワーとロマネスコを栽培したのですが、東京の市場で西洋野菜の需要が高まっていたこともあり、村の農家さんに、こんな野菜も栽培できるという事を知ってもらう目的もありました。東京の市場では高付加価値、少量多品目が高単価で取引されているんです。ロマネスコが12月に高単価で取引される情報は地方や農家の人には届いていない。今は、西洋野菜でもカラフル野菜が人気で、子ども達も食べる野菜の関心度が違うんです。そういったエピソードを村の方にお話して、いいもの、美味しいものを作りませんか?という私の働きかけに、賛同してくれた農家の方は現在8人。栽培経験のない西洋野菜を皆で作ってみよう!と活動を始めています。西洋野菜のカタログを見ながら、勉強会も行いました。みんなで一緒の作物ではなく、みんなで違う作物を作って経験して、1人1人得意分野を作ろう!と、農家さん8人は結束し始めています。会合をとても楽しみにしてくれているんです!

 当初の予定とは違うけれど、これも農業支援になっているんじゃないかなと思って活動しています。

Q3.今後の目標を教えてください。

 1年間活動してきて感じた町の課題は、やはり農業従事者の高齢化、後継者不足です。農業は難儀な仕事と言う人が多い。じゃあ、それをどうしたら良いと思う?と聞いても誰も意見が出てこないんです。

 農業従事者が活き活きと農業できれば、若い世代の農業従事者が増えると思うんです。家族が休みなく大変な思いをして農業をする姿を子どもが見ていれば、後継者、担い手にはならない。やはり農業は衰退の一途を辿るんです。だから、農家さんにはなぜ作るのか?作る意味を改めて考えてもらいたいんです。このままで良いのか?と。その「気づき」を与えるのが自分の役目だと思っています。

 今後は、村の現役の農家さんが元気なうちに都会から若者を迎え入れて、農業指導をしてもらったり、関わる人を増やしたいと考えています。そして、地元が潤っていくような仕掛けづくりをしたいと思っています。その1つとして、地区ごとに特産の野菜を作っていきたいと思っているんです。それがパッケージになって、平田村産のストーリーで販売できる。作物のこだわり、ストーリーの発信ができれば、良いもの、美味しいものへの対価は高くつくんです。これからの農業を考えていくとき「少量多品目で品質にこだわる」が1つのキーワードになります。まずはその構想を村の農家さんにお伝えし、協力して下さる方が増えたら、地区ごとのミニマルシェを行いたいと思っているんです。今はそんな想いを持って、協力隊2年目の活動をスタートさせています。


Q4.応募を検討している方へのアドバイスをください。

 地域おこし協力隊になる以上、地域と関わりを持ってとことんやって欲しいと思います。地域おこしの“主”は自分がやりたいことではなく、主体はいつも地域にある事を忘れないで下さい。
 協力隊として決められたミッションに拘らず、柔軟性を持ってその地域の問題や課題を解決していくことも協力隊の役割ではないかと思うんです。その時に大切なのが、自分一人で勝手に考え行動するのではなく、自分の置かれている立場をわきまえ、必ず自身の考えを行政の担当者と共有し、話し合いをした上で行動すること。いわゆる“ホウレンソウ”(報告・連絡・相談)が重要です。私の場合は、自分の思い描くビジョンや目標を文書化して、計画や、やりたい事を定期的に行政の担当者に共有しています。
 コロナ禍の協力隊活動で思うように進まないこともあるかと思います。しかし、こんな時だからこそ地域を元気づけるために何ができるかを考え、活動する柔軟性が協力隊に求められることだと思います。


関連リンク
平田村ホームページ