福島市は、東北新幹線で全国とつながる福島県の県都。「大波地区」は市街地の東にあり、海側への幹線道路である国道115号線が走るのどかな田園地帯です。
2021年3月6日に行われたオープンキャンパスは、本気で移住を考える参加者と、事業パートナーを求める福島市担当者との突っ込んだ対話が印象的な、熱のこもったイベントになりました。

INDEX
_■1 イベントってどんな感じ?
_■2 本題。大波地区協力隊のミッションと、現地視察
_■3 本音ベースで聞いた、参加者の感想
_■4 地域の想いも知ってほしい!
_■5 まとめ 参加して分かった!オープンキャンパスに参加すべき3つの理由


■1 イベントってどんな感じ?

当日は、カラッと晴れた土曜。オープンキャンパスに参加したのは、「食と健康に関心がある」というツツミさんと、福島市への移住を検討されているワタセさんご夫妻です。
(※コロナ感染症対策のため、今回は人数や参加エリアを限定して実施しています。)
お昼過ぎに福島駅に集合し、幹線道路を東へ。バスの中でタイムスケジュール確認と自己紹介をしながら、大波地区を目指します。

福島市から東へ。115号線を15分ほど走り、のどかな風景が広がる大波地区へと入っていきます。

こちらが今回のメインホスト。福島市役所の米尾さん(左)と、前任の協力隊 永井康統隊員(右)


田んぼを見下ろす地区の集会所に到着し、オリエンテーションからスタート。最初に米尾さんから、市の概要や気候、名物や温泉などの魅力が紹介されました。福島市は、アクセスのいい田舎。市内には「土湯」「高湯」「飯坂」という3つの温泉がありますが、移住すると、3温泉の無料パスポートがもらえるそうですよ。

■2 本題。大波地区協力隊のミッションと、現地視察


今回福島市が募集する「大波地区協力隊」のミッションは、地域内へのカフェの立ち上げと、まちの新しい特産物「さつまいも」などを使った6次化商品の企画・販売です。大波地区に住み、地区で採れる農産物の販路拡大や、地域活性化に取り組むことも期待されています。
> 募集情報ページ(2021/3/15応募締切り)

-募集の背景-
大波地区は、おいしいお米が採れるにもかかわらず、風評被害により販売量が激減していた地域です。
永井隊員(NPO法人0073代表)はこの米に惚れ込み、「大波米」としてブランド化。独自の販路を拓き、首都圏などへ年間約8tを販売しています。さらに、農業の様々な問題の解決を、「農閑期に、新たな特産物としてさつまいもを栽培すること」や「6次化商品開発・販売」、「若手就農者の支援」などを通してサポートしてきました。
永井隊員は今後もこの地で活動を続けるものの、協力隊としては任期が終わるため、積み残した課題である「地域内へのカフェのオープン」を担うパートナーを求めています。

-3年間の仕事-
必ずしもこの通りでなくてもいいけれど…という前提で話されたのは、3年間の具体的な仕事のイメージ。

1年目:永井隊員がサポートしながら、地域に入り、地域の方を知っていただく年
2年目:新商品をつくり、マルシェなどで販売しながら市場の反応を調査する年
3年目:カフェをオープンさせ、独立して収益を上げるための準備をする年

協力隊の仕事はもとより、その後の生活までを見据えて、これほど明確なステップを見せてくれることに驚きました。

永井隊員は言います。
「地域にはいま、外食できるお店がありません。集まる場所がない。だから、カフェに期待している人が沢山いるんです。ダメだったから辞めるとか、人に言われたことを給料でやるつもりなら、この仕事は合わないと思います。協力隊の方には、(任期終了後の)4年目から自力で収益を上げるつもりで活動していただきたいと思っています。これから見る建物は、カフェ候補のひとつです。目の前の国道は交通量も多いので、集客は見込めると思っています。ただ、もっとイメージに近い物件があれば、別の場所でも構いません。」

厳しいけれど、ここで生活することをちゃんと考えてくれていることが伝わる言葉。この後の現地視察に向けて、参加者の本気度も高まっていくようでした。

-加工場とカフェ候補地の視察へ―
のどかな風景の中を歩いてカフェ候補地へ。前を歩いていたツツミさんと永井隊員が、何か話をしているようです。振り返れば、ワタセさんと市役所の米尾さんが談話中。こうして聞きたいこと・相談したいことを1対1で聞ける距離の近さが、オープンキャンパスのメリットだと感じます。

左手の黄色い建物が、カフェの候補地。元は漬物屋さんだそうです。

候補地は、目の前を国道115号線が走っている立地。すぐ後ろに、永井さんが米やさつまいもの6次化商品を加工している加工場があります。

加工場では、発売前のさつまいもの6次化商品『こがし蜜芋』が作られていました。「特産品としてさつまいもを選んだのは、米作りと時期がズレていて兼業しやすいから。茨城県の先生に製法を教えてもらって干し芋を作り、口どけの良い冷凍焼き芋『ひゃっこいも』も開発しました。ペースト状にして焼き上げる『こがし蜜芋』は、干し芋にはしにくい部分を利用して、砂糖を使わずに作っています。こういった加工作業は、農家の跡取りや若手就農者の冬季の収入源にもなっています。
大波のさつまいもや加工品を使った “ここでしか食べられない商品”をカフェで提供すれば、集客にもなると思っているんです。ただ私は料理は素人だから、商品開発は新しい協力隊にお任せしたい。」


こちらが焼き上がった「こがし蜜芋」。砂糖不使用と思えないほどしっかりした甘さ。飴状の周辺部分と中央のふんわりした食感があいまって、やみつきになりそうです。お芋の美味しさを実感することで、商品・メニュー開発のイメージが膨らみます。

道路側から見えるカフェ候補地の入り口。中は広く、工夫次第でいろいろなレイアウトが考えられる間取りでした。

-協力隊の強み-
最後に集会所に戻り、永井隊員のこれまでの活動報告と、質疑応答の時間へ。活動の詳細を聞いて、リアルな苦労と、その中に大きな使命感ややりがいを感じられていることを実感できました。
「協力隊は、“協力隊にしか出来ないこと”ができる存在です(下記)。また、協力隊としての3年間をどう使うかによって、その後が大きく変わります」。

協力隊にしかできないこととは…?
・地域では当り前。でも外から来た協力隊は魅力を見つけやすい。
・行政や公共施設と連携が取りやすいポジション。
(例えば、自分発信で回覧板を回せる。行政の協力を得て、普通は調べにくい情報も集めやすい。)



■3 本音ベースで聞いた、参加者の感想

では、オープンキャンパスの参加者はどう感じたのか。イベントの初めと終わりに感想を聞いていますので、その変化を感じてください。

-ツツミさん
参加前 :震災で被害を受けた福島には特別な思いがあって、いつか役に立ちたいと思っていました。食と健康に関心があるので、カフェオープンに興味があります。今日は現地が見られるということで参加しました。
参加後 :想像していたのは、役場でのオフィスワークを基本に現地を動く働き方。自分で考えながらビジネスを始めるということにハードルを感じました。

-ワタセさん
参加前 :就農を希望し、本気で移住先を探しています。また、協力隊の経験もあるので、他の方がどんなことをしているのか興味もあります。
参加後 :もともと今日は情報を受け取る日だと思っていました。参加してみて、自分達が大波地区で何をしたいのか考えなさいと、宿題をもらったようにも思います。また、福島市は、サポートの体制がしっかりしていることもよく分かった。帰ってよく考えたいと思います。

■4 地域の想いも知ってほしい!

イベント終了後、市役所の米尾さんにもお話を伺っています。
「福島市は、地域に寄り添い、協力隊に何をしてもらうかを一緒に考え、必要とする地域で協力隊を募集しています。地域によっては受け身のところもあるのですが、大波地区については、永井さんと事前にかなり話し合いをした上で募集内容を決めました。
私たちの目的は、協力隊を集めることではなく、地域を元気にすることです。地域と元気を分かち合える人に会いたいなと思っています。」

■5 まとめ 参加して分かった!オープンキャンパスに参加すべき3つの理由

  1. 地域を歩かなければ分からない雰囲気、一緒に働く人、仕事場をじかに見られる。
  2. 担当者や先輩協力隊に、聞きたいことが聞ける。やりたいことがあるなら、かなり具体的で突っ込んだ話も可能。
  3. 自分がやりたい仕事、住みたい地域かどうかを見極められる。判断材料が手に入る。

地域に住んで活動するのが協力隊。だからこそ、地域と自分との相性がとても大切なはずです。
地域おこしや「協力隊」に関心があるなら、ぜひオープンキャンパスに参加してみてください。