PROFILE |
地域おこし協力隊 |
---|
Q1.地域おこし協力隊に応募したきっかけや、赴任するまで不安だったことを教えてください。
美術家として活動する傍ら、2004年から和紙に関わる活動を行っていました。協力隊になる前は2年間、埼玉県から西会津町に通いながら、地域の若者の有志と一緒に、出ヶ原(いずがはら)和紙の再生事業を行っていました。その再生事業の成果が上がり、和紙の活用と継続という次のフェーズが課題になった段階で、出ヶ原和紙を地域の文化として根付かせ、持続的な地域の産業にしていくために、3年間かけて様々な試みをしていく協力隊を募集する事を知り、応募を決めました。
2年間の再生事業を行っていた際、当時、西会津町で活動していた地域おこし協力隊に町を案内してもらったり、一緒に活動する事が多く、協力隊と関わる機会が多かったこともあり、自身が協力隊になる事への不安はありませんでした。
Q2.活動内容と今後の目標を教えてください。
ミッションは地域に伝わる会津藩の御用紙であった出ヶ原和紙の再生、生産、活用です。
協力隊1年目は、出ヶ原和紙のPRと新たな価値観での紙づくり、販路の拡大など、和紙の可能性や活用を広げる活動を行いました。具体的には、築約120年の蔵と納屋を改装した「NIPPONIA楢山集落」の建築の内装に用いる建具や作品を手がけました。制作にあたっては、母屋の茅葺き屋根や梁、煙突の煤なども使い、建物の裏にある森の神さまの池で和紙を漉き、その土地や時の記憶を込めた作品作りを行いました。
出ヶ原和紙を地域の産業として継続できる可能性を探るためには、既存の販売や打ち出し方では難しいと感じています。どこの紙の産地も産業としては右肩下がりで、昔ながらの販売の仕方では立ち行かなくなってきているのが現状です。そこで、出ヶ原和紙のPRや販売先は海外も視野に入れて活動しています。昨年のニューヨークに続き、今年はインドを訪問し、紙漉きの実演やプロセスの紹介、商品の展示・販売などを行う予定です。そこで興味を持ってもらい、今度は西会津町に来てもらう。出ヶ原和紙をベースに、人が来て経済が回るという新しい循環を生み出すことで、会津の文化や出ヶ原和紙の文化継承につながる事を期待しています。
現在は私一人が紙づくりを行っている状況ですが、今後は町の人たちに広く関わってもらえるような形を作り、地域に根付かせることも課題です。興味を持ってもらうきかっけづくりとして講座やワークショップを開き、和紙の材料となる楮(こうぞ)を地域の人に収穫してもらうなど、いずれは地域の人たちと作業を分担して一緒に活動する人を増やしたいと思っています。
私自身は外から来た人間なので、文化のつなぎ役です。地域の人が主体で出ヶ原和紙が継続していくような仕組みを作りたいと思っています。
Q3.実際に暮らしてみた印象を教えてください。
西会津町は若い方だけでなく、年配の方々も自治意識が強く、自分たちでどうにかしようとする力や思いを持っているので、素晴らしいと思っています。魅力的な人たちが多く、排他的でないので、打ち解けると凄く良くしてくれ、何かと助けてくれるので心強く感じています。
私自身、様々な所で田舎暮らしをしていたので暮らしのギャップはありませんでしたが、雪が多い事は慣れません(笑)今年は雪が少ないといいなと思っています。両親の実家が北海道の豪雪地帯で、冬の間は除雪の手伝いなどをしていたのですが、雪質が全然違うことに驚きました。北海道の雪は綿のように軽いのですが、西会津の雪は重くて全然違うので、除雪が大変です。雪かき1つにしても集落ごとに雪捨てのルールが異なり、知らないとトラブルになってしまうので、雪国では雪との付き合い方を学ばないといけないかもしれません。
Q4.応募を検討している方へアドバイスをください。
地域おこし協力隊は地域の中で事業を始めたい時のスタートアップ(助走期間)としてはとても良い制度だと思いますし、役場に所属しながらも好きなことをやらせてもらえるのは稀有な立場なので、いい経験ができると思います。
協力隊に向いているのは、工夫しながら主体的に動けて根性がある人。地域でやりたいことが決まっている人のほうが活動の成果が出やすいと思います。異なる地へ入ることの覚悟を持って、その土地や地域の人たちへの敬意を忘れずに、活動していくことが大切だと思います。
関連リンク