PROFILE |
地域おこし協力隊 橋本 竜太郎 さん 所属地域:会津美里町 着任年月:2016年10月 出 身:福島県 活動内容:ワイナリー設置へ向けての準備 |
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Q1.地域おこし協力隊に応募したきっかけや、赴任するまで不安だったことを教えてください。
会津美里町に移住してくる前は、本格的な登山を学ぶため、長野県と山梨県にまたがる八ヶ岳の山小屋で働いていました。そこでの、自然に囲まれた生活環境や、常識にとらわれない生き方をしている人たちとの出会いに影響を受けたこと、加えて、山小屋での同僚でもあり、料理好きで実家が専業農家の妻と色々話をしているうちに、食や農業に対して関心が芽生え、自分でも農作物を作ってみたいと思うようになったのが、応募のきっかけです。
会津美里町のワイナリー設置に向けた地域おこし協力隊の募集を見つけた時に、地域活動に貢献できるところに注目しました。また「農業は品質の良いものを作ることも大事だが、加工や販路も考えないと厳しい」と耳にしていたので、ぶどう栽培(農業)だけではなく、ワイン醸造や農産物の6次化にも携われる業務内容に大きな魅力を感じ、『ぶどう』や『ワイン』の可能性を信じて応募しました。
また、本格的に農業を始めるからには、実際に拠点となる土地を決める必要があります。当時住んでいた長野県か、地元である福島県会津地方のどちらかで、農業の指導を受けながら仕事ができるところを探していたので、会津美里町は移住候補地として申し分ありませんでした。多少の不安はありましたが、子供の為にも、自分の実家に近く、仕事に集中できる環境が整っている会津地方の方が良いという思いがあり、妻の理解を得られたことも大きかったと思います。
Q2.活動内容を教えて下さい。
事業主体の地元企業である受入団体とワイナリー設置に向けて協働し、ワイン用ぶどう栽培やワイン醸造の技術習得、ワイナリー設置に向けたPR活動等を行っています。
これまでは、ぶどうの存在がワインにとって、とても大切だということを気にも留めずに飲んでいましたが、活動していく中で、いかに品質の良いぶどうを使うかがワインを造るうえでの鍵になると知り、毎日畑に出て、ワインに適したぶどう作りに挑戦しています。
2016年10月の着任から毎年春には、PR活動の一環として、ワイン用ぶどうの苗植え体験会を行っています。ワイン用ぶどうの栽培に関心がある方、ワインが好きな方、自然の中で体を動かしたい方など、大人から子供まで沢山の方に参加していただき、普段出来ないような体験を通して、参加者の方々と親交を深めることができました。このご縁をこの場限りで終わらせるのではなく、秋の収穫やワインが出来上がる時など何度も足を運んでいただけたら、とても素敵なことだと思っています。
冬の農閑期にはワイン造りの研修を行い、醸造に携わったワインの試飲会や活動報告会なども実施しました。
ワイナリーは、2019年4月のオープンに向けて改修工事が始まりました。会津三十三観音の一つである中田観音(弘安寺)、温泉や宿泊施設、飲食店などの周辺施設とも連携し、地域の夢がつまったワイナリーを目指します。
Q3.活動を通じて感じている事や、今後の目標を教えてください。
ワイン造りは『農業』と言われているように、『ぶどう』という農作物を相手にしているので、作業は待ってくれません。ぶどうの成長に合わせた枝や房の手入れ、草刈り、病害虫の防除などの作業に追われる日々です。一日中畑で作業をしているので、PR活動などがおろそかになってしまいがちですが、ぶどう畑の小さな変化や、作業風景、作業中に垣間見える磐梯山や飯豊連峰などの景色をfacebookページ『地域おこし協力隊が会津美里町にワイナリーをこしぇる』で不定期ではありますが発信するようにしています。この記事をお読みの皆さん、是非『いいね!』をお願いします。
ぶどうは手間をかけた分だけしっかりと育ってくれるので成果が分かりやすく、頑張りがいがあります。それでも病気になったり、虫にやられてしまう場合もありますが、自分の夢を実現するための貴重な経験ができるので、とてもやりがいを感じています。
活動を重ねて感じたことは、会津美里町新鶴地区は有名なぶどうの産地であるものの、担い手が少ないということです。ぶどう農家の高齢化もあり、ぶどう栽培を断念してしまうところも、今後増えていくと予想されます。
食と農業に関心を持った当初は、栽培する農作物を何にするか検討中でしたが、実際に担い手としてぶどう栽培に携わってみて、また、そのような地域の現状を目の当たりにして、「ぶどうを本格的にやってみたい。ぶどう栽培の担い手として地域に貢献していきたい」と考えるようになりました。
また、会津美里町は生食用ぶどうの産地でもあるので、ワイン用ぶどうの栽培に携わる人だけではなく、生食用ぶどうも同じように、栽培に携わる人が今後、必要になってくると感じています。将来的には、自分のぶどう畑を広げつつ、耕作放棄地の利活用や農作業の受託業務なども行い、生産者の立場から地域を支えていく役割を担いたいと考えています。
Q4.応募を検討している方へアドバイスをください。
私は、ぶどう農家がたくさん住んでいる会津美里町新鶴地区の『根岸』という集落に住んでいます。地域では『ここに移り住んできた人』という意味では注目されていますが、自分ではまだまだ地域に溶け込めていないと思っています。おそらく、定住を決めない限りは、よそ者であることには変わりないのだと感じています。それでも、地域の一員として積極的に地域の行事などに参加するよう心掛けました。そうすると、少しずつ地域の方々との交流が活発になり、気に掛けてくださる方も増えてきました。活動1年目は、定住者ではないということで消防団に入れませんでしたが、活動2年目になり、消防団にも入れてもらえることになりました。また、利活用できそうな畑なども紹介していただけるようになり、少しずつではありますが、地域に溶け込み始めたと感じています。
協力隊の中には、自分のやりたいことがはっきりしていて、突っ走ってしまう人もいるかもしれません。しかし、最初から焦らずに、まずはその地域に少しずつ溶け込んで繋がりをつくっていく事が大切なことの一つではないかと思います。
また、地域おこし協力隊という制度は、着任先の行政や受入団体など、業務内容によって様々な方々と関わることになります。その中で、なかなか思うように物事が進まないこともあるかもしれません。なので、行政や受入団体が『求めていること』と『自分自身がやりたいこと』のミスマッチを起こさないように、募集内容を事前にしっかりと確認することが大事だと思います。
自分がやりたいことやできることと、地域が求めていることが上手く融合することで、大きな可能性が生まれます。3年という限られた期間ですが、活動を通して沢山の方々との繋がりをつくり、一緒に貴重な体験ができるのも、地域おこし協力隊の醍醐味です。壁にぶつかり、悩むこともあると思いますが、自分を信じて、ぜひ一緒に福島県を盛り上げていきましょう。